こんにちは、植田です。
Cさんのプロフィール
川崎市多摩区在住の塗装業を営む33歳の個人事業主で3人兄弟の次男。
18歳から父親の塗装会社に勤務し在勤中に資格を取得した。
28歳で独立、最近取引を開始した元請業者が
Cさんのやる気を評価し大きな仕事を任せてくれるようになったし
顧問税理士からは「法人化もそろそろじゃない?」という声もかけられる。
父親の会社は兄が継ぐと聞いているし、弟は自分のところの事業を手伝ってくれるという。
これを機に建設業許可を取って事業を拡大していこうと考え始めた。
ネットで①神奈川県の一人親方 うちは建設業許可は必要?を見て、建設用許可がなんなのか、ある程度分かったよ。
うちは塗装業の許可とりたいんだけど、そもそも個人事業主の一人親方でも許可はとれるのかな?
建設業許可を取得するにはいくつかの「要件」を
クリアしていく必要があります。
もちろん、要件を満たせば一人親方でも許可がおりますよ!
それでは今回は「建設業許可の要件」を見ていきます!
前提条件
建設業許可には、該当していないと許可が下りない「許可要件」と
該当してたら許可が下りない「欠格要件」があります
許可要件1 経営業務の管理を適正に行える能力を有すること(ケイカン)
建設業に関し、一定の経営経験を有するを配置し、適正な経営体制を確保することが必要です。
建設業の経営は他の産業の経営とは異なった特徴を有しているため、適正な建設業の経営を期待するためには、建設業の経営業務について一定期間の経験を有した者が必要であるということです。一定の経営経験とは一般的に一人親方であれば5年以上個人事業主をしていれば満たすことができます。
いわゆる「ケイカン」ですね!
基本的には、一人親方のCさんの場合、要件を一人で満たさないといけないため、Cさん自身が「ケイカン」となります。その他の要件は下記のとおりです。
許可要件2 適切な社会保険に加入していること
令和2年10月1日の建設業法改正により、適切な社会保険に加入していることが建設業許可取得・更新のための要件となりました。
健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に加入すべき事業所(営業所)において、適用除外に該当する場合を除き加入の確認ができない場合は、建設業の許可を取得できません。
雇っている人数 | 健康保険 | 厚生年金保険 | 雇用保険 |
---|---|---|---|
5人以上 | 必須 | 必須 | 必須 |
1~4人 | ー | ー | 必須 |
同居の家族だけ | ー | ー | ー |
自分ひとり | ー | ー | ー |
個人事業主は上記の表のとおりです。自分だけの場合や、同居の親・子供・兄弟などで事業を行っている場合は、社会保障に関しては何も入る必要はありません。
注意
個人事業主でも、一人でも人を雇い入れると、雇用保険が必要になります。また、だれも雇わず一人で事業を行ってる場合でも法人化した場合はご自身の健康保険・年金の加入は必要です。
一人親方の個人事業主が許可取得後、一人でも従業員を雇用した場合等、適切な保険に加入させないと要件の欠如として許可取消しとなる可能性があります。雇用の予定が出てきた場合は、早めにハローワーク等へ問い合わせをしてください。
うちは今は1人だけど、塗装業の経験のある別居の弟が一緒にやりたいって言ってるんだ。
弟を雇ったら雇用保険に加入させないといけないんだね!
許可要件3 専任技術者の配置(センギ)
建設業を営む全ての営業所ごとに、許可を受けようとする建設業に関する一定の資格又は経験を有する技術者を専任で配置することが必要です。専任技術者となり得る技術資格要件は、一般建設業か特定建設業か、その業種により異なります。一般的に一人親方の場合は一般建設業となるので、一般建設業のセンギの要件をご紹介します。
一般建設業のセンギ
次のイ、ロ、ハのいずれかに該当する者
イ 【卒業+経験】許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し、高校の指定学科(旧実業学校を含む)を卒業後5年以上、又は、大学の指定学科(高等専門学校・旧専門学校を含む)を卒業後(専門職大学の前期課程を修了した場合を含む)3年以上、実務の経験を有する者
ロ 【経験のみ】許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し10年以上の実務の経験を有する者(学歴・資格を問わない)
ハ 【知識・技術・技能あり】イ又はロに掲げる者と同等以上の知識・技術・技能を有すると認められた者
① 専修学校指定学科卒業後5年以上の実務経験を有する者(専門士又は高度専門士を称する者であれば3年)
② 一定の資格を有する者
③ 登録基幹技能者講習修了者
④ その他、海外での工事実務経験を有する者で国土交通大臣の個別審査を受け認定を受けた者等
注意
※ 自分以外の従業員を専技にし、許可後にその専技がやめてしまったりなど、後任が不在となった場合は、要件の欠如として許可取消しとなってしまうので、専技がやめたしまった場合ははやめに専技の変更を届け出ましょう。
じゃあ、弟と一緒にやることになって、弟をセンギにした場合、
弟が辞めてしまったら、早くセンギを変えないと、許可が取り消されてしまうってこと?
そうなんです。
上記の要件を満たせば、Cさん自身がケイカンもセンギも兼ねることができるので、そういった心配がある場合はCさんがセンギも兼ねた方がいいかもしれませんね!
センギの注意点として他には「営業所ごとにおくこと」などがありますが
今回は個人事業主・営業所は一つということですっ飛ばしています!
許可要件4 適切な営業所が存在すること
建設業許可の要件には営業所の存在も必要になります。自宅のリビングや自分の部屋から現場の往復だけで済むような事業ではダメだということですね。では、営業所とはそもそも何なのでしょうか?
「営業所」とは?
本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいう。したがって、本店又は支店は常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等建設業に係る営業に実質的に関与するものである場合には、当然本条の営業所に該当する。
また「常時請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所をいい、契約書の名義人が当該事務所を代表する者であるか否かを問わない。
ということは、実際に見積もりやら、営業やら、図面を書くような
スペースを確保できる部屋を新たに契約しないといけないってこと?
いえ、ご自宅の一室を建設業の営業所として申請することもできます。
ただ、いくつかそろえていただきたい営業所としての機能や、条件が
あります。
営業所の要件
お客様が来た時の応接スペース(最低椅子2脚・テーブル1つ)
ポスト・看板の設置・屋号がわかる状態になっていること
PC・電話・コピー機など実際に必要な機器の設置
ケイカン・センギが常駐していること
事務所として、使用権原があること
居住スペースや、ほかの事業者と、明確に区分されているなど、独立性があること
この「使用権原」ですが、
Cさん自身の「所有している」事務所であれば問題はないのですが、
Cさんが「賃借している」場合は「事務所としての使用」を所有者に
許可を得ていなくてはいけません。
許可要件5 誠実性について
建設業許可を取得するには誠実性が問われます。
誠実性とは
個人である場合においてはその者又は支配人が、請負契約に関し、「不正又は不誠実な行為をす
るおそれが明らかな者」でないことが必要です。
「不正な行為」とは
請負契約の締結又は履行に際して、詐欺・脅迫・横領等法律に違反する行為をいいます。
「不誠実な行為」とは
工事内容・工期等について請負契約に違反する行為をいいます。
許可要件6 財産的基礎等
倒産することが明白である場合を除き請負契約を履行するに足る以下の財産的基礎又は金銭的信用を有
していることが必要です。
一般建設業許可の財産的基礎要件
下記の①、②のいずれかに該当すること
① 直前の決算において自己資本の額が 500 万円以上であること
② 500 万円以上の資金調達能力のあること
「自己資本」って何?
個人にあっては期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額をいいます。
※ 白色申告の場合等、確定申告書に添付された貸借対照表で金額が確認できない場合は、500万円以上の預貯金残高証明書が必要になります。
「500万円以上の資金調達能力ってなに?
主要取引金融機関発行の500万円以上の預貯金残高証明書(残高日が申請書の受付日から起算して前1か月以内のもの)により確認します。
設立後一度も決算期を迎えていない場合はどうしたらいいの?
個人の場合は、②主要取引金融機関発行の500万円以上の預貯金残高証明書(残高日が申請書の受付日から起算して前1か月以内のもの)により要件に適合することを確認します。
経理関係は妻に任せちゃってて分からないんだけど・・・
銀行口座の残高が500万以上あればとりあえずは大丈夫ってことかな?
とりあえずは残高で証明できれば大丈夫なのですが
その口座の残高の500万は残高日が申請書の受付日
から起算して前1か月以内のものでないといけません。
許可要件7 欠格要件等に該当していない
一番初めに、建設業の許可の要件は「該当していないと許可がとれない要件」と「該当していると許可がとれない要件」があるとお話ししました。いままでご紹介してきたのは「該当していないと許可がとれない要件」でしたが、ここで最後「該当していると許可がとれない要件」をお話しします。
下記のいずれかに該当するときは、許可を受けることができません。
a 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
b 不正の手段により許可を受けたこと、又は営業停止処分に違反したこと等によりその許可を取り
消されて5年を経過しない者
c 許可の取消処分を免れるために廃業の届出を行い、その届出の日から5年を経過しない者
d 許可の取消処分を免れるために廃業の届出を行った事業者について、許可の取消処分に係る聴聞
の通知の前60日以内に当該法人の役員等若しくは政令で定める使用人であった者又は個人の使用人
であった者で、当該届出の日から5年を経過しない者
e 営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
f 営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
g 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった
日から5年を経過しない者
h 建設業法、又は下記の法令の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
i 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規
定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
j 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの(※
2)
k 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法人である場合にお
いては、その役員等)が上記のいずれかに該当する者
l 暴力団員等がその事業活動を支配する者
申請時に提出する誓約書や略歴書又は役員調書の「賞罰」欄の記載により申告します。
(「賞罰」欄に具体的な記載がない場合に行政処分等の事実が確認され、当該事実が法第8条に該当する場合には「虚偽申請」とみなされます。)
Cさんは何も該当しないと思いますが、もし誰かを雇い入れて
一定の責任ある立場にする時は、その人の誠実性や欠格要件も、要件に
なっていきます。
なるほどね~。
うちはここまで全部クリアしていそうだよ!
早速、書類を作ってみたいと思います!
よかったです!
・・・・実は建設業許可はここからが大変になってくるんです。
それが「証明する書類の収集・作成」です。
・・・。
すや・・・・